漂流祝祭日
横浜市民ギャラリー地下1階で開催した、waxogawaと李静文によるキュレーション展。東京というアートパワーの中心地からの「漂流」を試み、20名の若手作家による星座を公共施設の地下空間に仮設した。
Concept
主催:whh! キュレーター:waxogawa/李静文 インストーラー:太田宗宏/Mooney Ohta デザイン協力:犬童アツヤ/柴原佳範。
会期は2023年4月8日〜4月30日、会場は横浜市民ギャラリー地下1階・展示室B1F(神奈川県横浜市西区宮崎町26-1)。開室は金・土・日・月の10:00〜18:00(最終日は15:00まで)、火・水・木は休室。入場無料。
英題は Dérive feast。タイトルは、アーネスト・ヘミングウェイ『移動祝祭日』から着想されている。パリの喧騒の内側から文学的挑戦が生まれたこと、そして「強固な大地としてのパリ」と「ホワイトキューブの発祥地たるアメリカ」の往還を、東京=横浜の軸へ写像する企画として構想された。東京というアートパワーの中心地に対して「漂流」を試み、横浜市民ギャラリーという公共施設で可能な「祝祭日」を提案する展覧会として説明されている。日本語タイトルが「移動祝祭日」ではなく「漂流祝祭日」であることも、祝祭そのものが移動するのではなく、主体や作品群が中心から漂流するというニュアンスを示している。
横浜市民ギャラリーの紹介では、本展は「慶応SFCの学生による芸術的応答の星座」と位置づけられている。20名の作家を単一のテーマに回収するのではなく、複数の作品・メディア・作家の活動を地下1階の広い公共施設に散在させ、関係を結ばせる展示だった。展示空間はY字に繋がった複数の部屋として体験され、回遊や分岐を含む構成だったことが鑑賞記録からうかがえる。
南壽イサムは、衣装にモニターやマイクを備えた身体的な作品を展示し、観客の参加や応答を誘う装置として機能した。田中小太郎は、金属板をモーターで振動させ音を発する作品で空間に音響的な不安定さをもたらした。太田遥月は、石やガラス、糸を用いた音を出す装置のような作品を展示した。吉川永祐は水音を発する作品で、鑑賞者を空間の奥へ誘導するように機能した。吉野俊太郎は、ブランクーシ《接吻》をモチーフにした二体のぬいぐるみ状の作品を離して配置し、噛み合わない独り言として展示した。伊藤道史はVR作品を出品し、現実空間の他の作品を一時的に見えなくすることで、案内や他者の声の介入を経験させた。光岡幸一、tonii、鷲見友佑、村松珠季、AHMED MANNANも、それぞれ異なるメディアと即興的な制作・パフォーマンスで参加した。
鑑賞記録の多くは、本展を統制されたホワイトキューブ型のグループ展というより、音・身体・参加・即興・不在が混在する祝祭的な展示として記述している。
この展示は、waxogawaのキュレーション実践において、デカメロン「kɯ̟ᵝzɨᵝɾe̞^崩れ」(2023年1月)とbiscuit gallery「帰路にまざまざと知る」(2024年2月)のあいだに位置する。前者の夜・声・ゾンビ・顔貌性の問題系、後者の記憶・言語訓練・翻訳の問題系に対して、本展は都市中心からの離脱と公共施設における若手作家の星座、祝祭的なカオスを試みた企画だったと位置づけられる。
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